遠いうねり グイン・サーガ127巻

遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)

遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)

先月栗本薫さんが亡くなってから最初に出版された本です。
後書きもご本人が4月に書かれていて、まさかそれからひと月もたたずに死んでしまうことになるなんて、思ってもいなかったでしょうね。
人間死期が近づくと、最後の望みはただただひっそりと、心静かに過ごしたいと考えるものなんですねえ。
いやそうでもないか。
自暴自棄になったりしないで、きっちりと自分に残された仕事を片付けたいと覚悟して過ごすというのは、大変な精神力が必要なことだろうし。
ギリギリまで頑張ってしまう人というのもいるんだなあ。

グイン・サーガは確か3巻分ぐらいは書き溜めてあると、神楽坂倶楽部で読んだような気がするので、後2巻分、129巻までは出版されるんでしょうかね。
その後は未完のままお終いにしちゃうんでしょうが、できたら誰かプロの作家さんにでも書いて欲しい気がするなあ。
田中芳樹さんなんかも、原案だけ出して、荻野目悠樹さんに似たような話を書いてもらっていませんでしたか。
(いや彼はまだ生きていますけども)
素人やファンの人達なんかは、絶対に続きやパロディの130巻以降を書いちゃいそうですが。
私も129巻を読んだ後で続きを考えてみようかしら。


さてこの「遠いうねり」は、前半はパロでイシュトヴァーンとヴァレリウスの会話が殆んどです。
そして後半は、いよいよヤガに到着したヨナとスカールの話でした。
全体に、まあまあ話の進みは順調にいっているといったところですかね。

それ程これまでの数巻にあったように、内容が停滞しているといったほどではなかったかな。
しかし毎回同じ人物なのに、性格や人格がコロコロ変わってきている感じがするなあ。
イシュトヴァーンのことを、ヴァレリウスは思っていたほど馬鹿ではなかったのかといささか見直してきているようです。
しかしそれにしたって、これまでイシュトヴァーンの行動が支離滅裂だったのは事実だしねえ。
作者いきなりイシュトヴァーンを賢くしないで欲しいなあ。
それじゃあこれまでの彼の出鱈目ぶりって一体なんだったんだい。
そんなに話の中では何年も経っているわけではないんだから、若いときの過ちだったというにはいささか最近のことすぎる気がするよ。
まあ、いつまでも彼がお馬鹿な王様では、展開に差し障りがあるからなんでしょうが、イシュトヴァーンってそんなに策略をめぐらせたりできる人だったっけ。
なんとなく私のイメージしていた人格とかけ離れていっている気がする。
決して人格が成長していっている風な書かれ方には思えないんだけれども。


印象としては、後半の方が面白かったかな。
ヤガなんてお堅い宗教都市にはあんまり興味は無かったんだが、どうやらいろいろ刺激的なことが起きそうな気配ではないですか。
ヨナ君もすっかりアクティブな人物に変化してきているみたいだし。
こちらの方は割りと気に入っています。
それに彼がいつまでも思索的な人物のままだったら、確かに話が進まなくなっちゃうしね。
この場合はよい変化に思えますね。
スカールの方が主役ではなくて、ヨナ君が話を引っ張っていっているような感じです。
登場人物たちが払底しているうちに、いつの間にかヨナ君が活躍するようになってきましたか。
確かにちょうどいい年齢の若者のキャラクターが、全く死に絶えてしまった状態ですもんね。

もっと早い段階で、強烈な個性と魅力を持った、新しい副主人公候補を登場させておくべきだったんでしょうね。

今からチビイシュトヴァーンやドリアン君たちの成長を待つんではいささか気が長すぎますし。
栗本薫さんは、最後まできちんとストーリィを練ってから書く人ではなかったしなあ。
行き当たりばったりで、あれこれ破綻の多い作品の方が、その場その場では迫力があって面白い小説だということも結構あることだしねえ。
最初から最後まできちっと構成された、起承転結がはっきりしている端正な作品が、無味乾燥な教科書的な駄作ということも、ままあることですし。
こういうむちゃくちゃな作風が栗本さんの持ち味だったんだし、それを長年楽しんできたんだからな。

そういうことで、後何冊出版されるかわからないが、残り少ない彼女の作品をじっくりと読み込んでみたいと思います。
後は未だ買わずにいた同人誌の方でも、購入しますかね。











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ありがとうございました。





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